【消えた蛍の火!(ノンフィクション作家風!?)】
仕事が終わり22:30頃湾岸の大黒PAに到着した。
今日は、福岡から我々と同じSL乗りのひでぴ氏が、東京出張にあわせて遊びに来ている。
彼は、REVANCE6.1のエンジンをつい最近搭載した人物である。
今回、筆者のAMG7.2のパフォーマンスと今日集まる他のメンバーの走りを見て帰る予定になっている。

何時もの事だが、週末になると大黒PAの中は巨大なモニターを載せたクルマ、左右に巨大なマルチパワーアンプにスピーカーで武装したワゴン、音に合わせて色とりどりに明滅するネオン管等々、音響機器がびっしりとマウントされたクルマが100台以上止まっている。
それらが一斉に大音響を夜の湾岸に響かせている!今日は金曜なので比較的台数は少ない。毎週土曜の夜ともなると、大黒PAエリアにはいわゆる「大黒仕様」のクルマが数百台集まり、夜の8時過ぎにはエリア内は満車の状態!外には空き待ちの渋滞が深夜まで続くようになる!

少し遅れて到着した筆者は、足早にPA施設内の軽食コーナーに向かった。そこにはすでに、ひでぴ、タッキー(タッキー号車)、紅氏(ベニ号車)が居て、車談義にふけっている。
疲れのためか体調を崩していたひでぴ氏も元気に復活しているようだ。

23時15分を少しまわっただろうか、誰ともなく「そろそろ行こうか」と言いだし、Midnight Lovers の始まりとなる。

ひでぴ氏が筆者の助手席に乗り込んだ。筆者は、SLのショックのセッティングを湾岸用に変更し、全員で無線の周波数チェックと簡単にコースの確認を行い、タッキー号・ベニ号・T号車は夜の湾岸へと繰出して行った。

24時を過ぎた頃、湾岸からアクアラインに入る。そこから下りのトンネルで数キロの直線が続く。そこまで先頭で走っていた筆者はタ号・ベニ号を先に行かせ、後からV12・7.2サウンドを浴びせながら、ブチ抜き、ひでぴ氏を驚かせる、と言う作戦だった!

距離にして3〜400メートル程だろうか、2台を先行させてこちらも全開モードに入った! 全開して間もなく、助手席のひでぴ氏が○○○kからの加速に驚いている。(ひでぴさん、驚くのはまだまだ早いよ!)
ベニ号のテールが見る見るうちに近づいて来る!距離にして約30m程に近づいた所で、速度差がそんなに変わらなくなってきた!!
それを見ていたひでぴ氏が更に驚いた様子で口を開いた。
「あの2台!結構速度出てますね!」 筆者も既にその時には、先行2台の異変に気付いていた。
「いつの間にエンジンをチューンしたんだ!!」○60kからの加速状態が筆者の7.2とさほど変わらない!

やっとの思いでベニ号の横を通りすぎたが、その先200m程の所には、タッキー号がまだ全開をくれている!「はっ、速い!」筆者は心の中で叫んでいた!
それでも徐々にではあるが、タッキー号との距離が詰まって行く。
ひでぴ氏が「タッキー号のマフラーが真っ赤になっている」と言っている。良く見ると、本当だ!真っ赤だ! 
戦闘機が離陸していく時に、ジェット噴射口が真っ赤になっているのと似ていた。もしや、あのマフラーは、ジェット噴射口!!?…な、わけは無い。

しかし、こっちもタッキー号の真っ赤になったマフラーを感心して眺めている場合ではない。ひでぴ氏が退屈そうにしている。今にもあくびをしそうな感じだ。T号のメーターの針は、もう既に振切れているのだ!
まもなくトンネルが終わり海ほたるPAに到着してしまう。このままでは助手席のひでぴ氏を驚かせ、感動の涙を流させる事は出来ない。(予定では、そのつもりだった!)ひでぴ氏もそれを望み期待している筈だ!(本当か!?)

「そうだ!この際、タッキー号のスリップに入ってしまえ!」

スリップに入るとスーッと車間が詰まり難なく前に出る事が出来た。そして、T号を先頭に3台は一列に並んでPAに入りしばしの休憩をとった。
なんとか、7.2の面目は保った格好だが、そこには釈然としないものがあった。

深夜の誰も居ないPAで「いや〜、おもしろかったな〜」「皆、速度が一緒だよ〜!」「直線は暇でどうしようかと思った〜!」「いやー、今日はT号のATがオモイッキリすべっていたねー!」「針だけはビンビンだったねー!」等々と全員で声をたてて馬鹿笑いをした! そこには、筆者の引きつった笑い顔もあった…。

そうなのだ!T号のATは、7.2の大トルクに負けてATがすべリ出して、メーターの針だけが上がっていたのだ!(速度メーターは、パルスで拾っている為)

Midnight25時、ブルーライトの点滅にライトアップされた海ほたるPAでT号のATの火が静かに消えていった…。

しかし、ひでぴ・タッキー・紅氏の笑顔は、ブルーライトの点滅の光にてらされて、何時までも光っていた…。

チャンチャン、おしまい。


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