【後編:バックファイヤー】
イグニッションスイッチを回し、V12を目覚めさせる。
先頭はタッキー号で、その後にT号・紅号と続く。SAから本線に合流してルームミラーに目をやると、そこにはまだ流星号は写っていない。最後尾近くからの出発なのか!?

タッキー号が徐々に速度を上げて行く。 筆者もそれに続いた。
最後尾が本線に合流した頃であろうか、突如Roger号から「R(流星号)が行きましたよーー!」と無線で一報が飛び込んできた!
タッキー号、紅号車も同時にその無線からの情報を聞いている筈だ。
次の瞬間、タッキー号、紅号車が左側走行車線に進路変更を行い、タッキー氏から「Tさん、どうぞ!」と連絡が入る! 筆者に「先に行って、GTRの標的になれ!」と言う事なのか!?

いっぽう、紅号は黙して語らず、と言う姿勢だ!
そう言えば、ツーリングの前日に紅氏と交わした会話を思い出した!
「流星号が襲って来てATが破壊されたら牽引してね!」と紅氏に冗談で話したら「いいよ!」と真顔で返答されてしまった! (本当に壊れると思っていたのか…!?)
この時既に紅氏は筆者に「明日はATが壊れるまで踏め!」と示唆していたのか!?

Roger号は、さらに流星号の後方で事の成り行きを見学している!

走りに行く時は、T号の近くには常にタッキー号・紅号が一緒にいるのに、今日は傍観者になるつもりらしい!
筆者は、この時ほど孤独を感じた事は無かった。


「それでは、行きます」とだけ返答し、アクセルを一気に踏みこむ! T号が加速状態に入った! 
やはりATが滑っているようで、本来の加速状態では無い様だが、無視してそのまま加速を続ける。
再度、ミラーに目をやると、そこには既に流星号の姿が「早く行け!」と言わんばかりに大きく写し出され、今まで隠していた牙を剥き出しにして襲って来た!
「もうここまで来たのか!」 やはり、ただ者ではない!

中郷SAから、いわき勿来ICまでの距離はおよそ18kmだ。 交通量も少ない。 一瞬で終わる距離だ!
途中の関本PA近くまではT号が流星号の前を走る。 ルームミラーから当然ではあるが流星号が消える事は無いが前に出られる事も無いようだ。
ここまでは互角のようだ! それとも、こちらの様子を見ているのか!?

関本PAの近くに来た所で、速度を落とし車線を左に譲り、今度は流星号を先に行かせる事にした。
いわき勿来ICまで、あと4.2kmだ。
流星号は待ってましたと言わんばかりに爆音を轟かせながらT号を右から抜いて加速して行く。 だが、この先は、超高速コーナーが待ちうけている。 しかも、複合コーナーのようだ! 
つまりコーナーのRが一定ではなく、コーナーの先が更に入り込んだ2つの複合Rからなる超高速コーナーだ!
ゆっくり走ればまったく気付かないだろうし、コーナーであると言う事も気付かないドライバーもいるかもしれない。

流星号がそのコーナーに突入して行く!
T号はATが滑っているために、タコメーターはレブリミットイッパイを指していて、正確な速度はわからないが、後方に飛び去る景色から推測して、速度はおよそ■50〜■60K位か!
この速度ならT号も充分突入して行ける! 最初の進入Rが終わり次のRにさしかかった所で、流星号が突如姿勢を乱し始めた!! 
どうやら、進入角度とR角の読み違いのようだ! 後方から見ていて、非常に不安定な動きをしている!
しかし、ステアリング操作とアクセルワークでなんとか姿勢を立て直したようだ。 

よかった…。

ふつう、この速度レンジで姿勢を乱したら、 流星号が本当に流星になってしまうのだが、さすがスーパージェッターだ!!  ただ者ではない!!

流星号が姿勢を乱している間に一気に距離が縮まった。 流星号にT号をドッキングさせる事が可能な距離まで充分近づくことが出来る状態だが、流星号には後方火炎放射器(バックファイヤーとも言う)という秘密兵器があり、近づくと焼かれて撃墜されてしまう!

ここで、何故、筆者がコーナーのRを事前に解ったのか種明かしをすると、実はGPSナビで事前にコーナーのRを見ているからである。
筆者の場合、縮尺スケールを400mに設定して、自車の速度とGPSナビに映し出される高速道路のコーナー角度により、過去の経験値から、どの速度までなら曲がって行けるかが判っている!
つまり、いつもカンニングしているわけだ!
(だからrauruちゃん、T号はオーバースピードでコーナーに突っ込むという事は絶対無いので、ナビシートに座って硬直しなくても良いんだよ! 常に安全運転だから…!)

余談だが、筆者のもう一台の愛車であるVOLVO850RにもGPSナビをつけていて、同じ様に常に高速を走る時にはカンニングをしている。
また、VOLVOには車高調を入れており、ワインディングではT号よりも速く走れる仕様にもなっている。
SLよりもVOLVOの方が一般道では乗り心地が悪いので、家族からはいつもクレームの嵐が絶えない。

筆者のGPSの使用目的の60%は、このようなカンニングが目的で、40%が本来の道路検索に使用している!
また、この2台共にETCを取り付けているが、こちらの使用目的は、40%が料金所のノンストップ通過や通行料金の多少の割引だが、やはりGPSと同様に残りの60%の使用目的は別の所にある! ここで、その使用目的を書くのはヤメテおこう!

本題にもどろう。

流星号が姿勢を立て直している間に距離を詰めて、次の直線で一気に前に出る事にした!
前に出たと思った瞬間に いわき勿来ICの標識が目に飛び込む。 ここで終わりである。
最後は流星号とランデブー走行をしながらゆっくりと何事も無かったようにICで料金を支払い後続の車両が到着するのを待つ。

流星号から降りてきたスーパージェッターがニコニコ微笑みながらT号に近づいて来る。

一瞬ではあったが、銀河系の勇姿・スーパージェッターと共に走れた喜びと、その愛車である流星号のバックファイヤーの炎は筆者の車遊録から消える事は永遠にないだろう。

目的地へ到着し、昼食、休憩、記念撮影、歓談等々楽しく過ごした。
歓談時にスーパージェッターが愛ママに「流星号に6MTを入れたい」だとか「愛号を弄りたい」とか言っていた! 愛ママは「SLは弄らないわよ」と優しく応えていたが、その目はワラッテいない! その眼光の鋭さは、流星号に牙を向けられるより怖いと筆者は思った!
よく観察していると、スーパージェッターは、愛ママと決して目を合わそうとしない。
少し怯えているようにも感じた! そこには流星号を華麗に操る銀河系の覇者の姿を垣間見る事は出来なかった!
筆者は〔こち亀〕の登場人物で白バイに乗っている〔本田巡査〕とスーパージェッターがダブって見えてしまった!!

楽しい時間は、あっという間に過ぎ去ってしまうものだ…。
全車で帰路につく。
夕闇の迫る中郷SAであい号、流星号とはここでお別れだ。
辺りを見回すと既に日も落ちて暗くなり始めている。
本日の幹事を務めてくれたタッキー氏より、「ここで解散します」と挨拶があり、次回の再開を約束して、各々帰路へ…。

SL軍団と流星号のエクゾストノートが初冬の高速道にいつまでもコダマしていた…。

 

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